タブー

警備に携わる人間がこういうことを言うのはタブーなのかもしれません。
ですが、先般のなんばの個室ビデオ店放火事件(関連記事・msn産経ニュース)について知るにつけ、警備ではどうにもできないことを痛感するばかりなので、ここに書かせていただきます。

あなたのまわりの店で、非常口や防火扉前に商品やディスプレイが陳列されていたり、自転車や荷物が放置されているのを見たことはありませんか?
というか、絶対に見たことがあるはずです。
こういった状況は、有事の際になんばの事件と同じ被害を招くことになります。

警備は当然これらの状況を把握しています。店には口をすっぱくして注意します。
商品やディスプレイ、店側の荷物については、警備が移動させることもあります。
でも客の自転車等についてはまず改善できません。なぜか?



それは「客の」自転車であるからです。

ここでは便宜上「客」と表記しますが、ほとんどは放置自転車です。
そこに自転車を置いて、他に行っている。(関連する過去ログ・その1その2
警備としては、他のお客様の駐輪の邪魔になりますし、非常口前などは危険なので、当然撤去したい。
でも店は、できれば動かしたくないんです。

理由1 ・ 客の自転車である
帰りにでも買い物してくれるかもしれないし、長期的に見れば客であるはずなので、動かしたりして反感を買いたくない。
まあ実際無駄なんですけどね、そんな期待……。彼らの帰りを見ている私たちが一番よく知っています。
むしろいつも放置自転車で満車で本当のお客様が来なくなることのほうが、よっぽど商機を逸すると思うのですが。

理由2 ・ クレームが怖い
ものの5メートルほど移動させただけでも「なくなった!盗まれた!」と騒ぐ客のなんと多いことか。
そういう客は、自分の行為を棚に上げて「なんで移動させたんだ!」と怒鳴りこんできます。
そしてどんなに危険性や店の不利益を説明しても、「それでも自分は客であって、自分が優先されるべきだ」というところに話を持って行く。
たとえ理不尽な内容であっても、店はクレームを避けたいので、及び腰になる。

理由3 ・ 金をかけたくない
監視用の警備を配置するにしても、啓蒙用の表示やサインスタンドを設置するにしても、金がかかります。
コスト削減が叫ばれる昨今、そういう直接商売に関係しないところに店は金をかけたくない。

理由4 ・ 人的パワーの不足
理由3に付随しますが、駐輪を整理する人間がまったく足りない。
たかがひとりやふたりの警備や店員がかかったって、1日に数百台からの自転車をさばききれるわけがない。
私もそういう現場では、肩や腰を壊しそうになります。そんなところ誰も行きたがりませんし、仕事も雑にならざるを得ないので、なお状態は改善から遠くなる。

理由5 ・ スペースが足りない
これは撤去しないせいで放置が増えるという悪循環のせいではありますが、移動させようにも場所がない。
非常口前などに放置してある自転車を正規の駐輪スペースに持って行くことすらできない。
純粋に施設をご利用になるお客様の駐輪場としては充分なキャパシティを有していても、放置自転車まで受け入れていてはあっという間に満車で、通ることすら困難になる始末。

理由6 ・ 責任を感じていない
そしてこれがおそらく最大の理由です。店はおろか、放置している客自身も責任を感じていない。
店に言わせれば客が自転車を勝手に放置しているのだし、客は自分の行為が有事にどんな危険性を持つかなんて想像もしない。なにかあっても自分が責任を取ることなんて考えていない。
そして両者がそもそも有事なんてあり得ないと信じている。この辺、なんばの事件でも同じだったみたいですね。

お客様から「非常口が塞がってるよ」と厚意のご忠告をいただくこともあるのですが、店側が改善しようとしないのでは警備にはどうしようもありません。
最終的に身を守るのは、店でも警備でもなく自分自身、ということになります。
よく利用する店では「実際に使える」非常口をチェックしておくことをお勧めします。

そして悪質なら、店に安全管理についてのクレームをつける、店レベルで無理なら本部等にメールするといったことをお願いします。
最初にも書いたとおり、警備としてこんなことを言うのは情けない限りなのですが、結局、店はお客様の言葉でしか動こうとしないのです。
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by keibi-in | 2008-10-08 15:53 | 警備  

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